この記事では、商社営業において欠かすことの出来ない仕入れ先との取引における大事な基礎知識をお伝えいたします。
営業となるとOut=販売=お客さんにばかり目が向いて、In=仕入=仕入れ先への対応をおろそかにする人を良く見かけます。
確かに、お金を生むのは販売ですが、一方で、その利益の原資になるものをいかに大切に出来るかが実は営業においての肝になるのです。
今回はそんなところに注目をしてお話しできればと思いますので、最後までお読みいただければ幸いです。
なぜ仕入れ先を大切にしないのか
買ってやってる精神が自分を追いつめる
最初に唐突な質問ですが、そもそも「仕入れ先ウケの良い営業の割合」がどのくらいであるかご存じですか?
分かりませんね。
そう、この質問に明確に答えることは非常に難しいのです。
こういったニッチな統計というものは探してもなかなか出てこないものです。
「聞いておいて何なんだよ!」
そう思ったあなた、もう少しだけ我慢して読み進めて下さい。
それでは、質問を変えてみましょう。
あなたが担当する全てのお客さんの中で「”本当に良い”お客さんとしてあげられる担当者の割合」はどのくらいですか?
思い浮かべてみましょう。
何割くらいでしたか?
7割を超えていれば素晴らしい数だと思います。
5割だとすればそれなりに良いお客さんに恵まれていると思います。
3割いれば実は合格ラインです。
1割程度しか浮かばない・・・実はこれで普通なのです。
では次に、あなたが「嫌だなぁ・・・」と思うお客さんの割合はどの程度で、具体的な担当者がすぐに思い出せるでしょうか?
「すぐに見積合わせをする」
「メールをしても返ってこない」
「情報提供させるだけさせて買わない」
「注文するのが遅かったくせに納期短縮の要求をしてくる」
嫌というほど浮かびますね 笑
こういったお客さんへは積極的に営業をしたいと思いませんし、場合によっては「もう買ってくれなくて良い」とすら思うこともあるのではないでしょうか?
最悪は、「買ってやってるんだぞ!」なんて、随分と前時代的にアンフェアかつ横柄な態度で高圧的に物事を言ってくる・依頼してくるお客さんもいまだにいますね。
このようにして、あなたがお客さまに対して思う感情こそが、仕入れ先があなたに抱いている感情そのものなのです。
外にばかり目が向いて、いざ自分がどのようにして見られているか、そこを忘れている人が多いのです。
心のどこかで「仕入れている方なんだから当たり前」という気持ちで仕入れ先へ接してしまっていませんか?
ここまでの内容で、ハッ!とする気持ちが1ミリも湧かない人は、これ以上この記事を読んでも意味が無い程成熟された営業マンなのでここで離脱していただいて良いと思います。
返して欲しいけど返さない
一方通行は誰にとっても虚しいもの
お客さんからの依頼を受けて、商社であるあなたは仕入れ先へ見積依頼をします。
メールで依頼をすることが多いでしょう。
これに対して、仕入れ先から見積回答がメールで届きます。
あなたはその情報をもとにお客さんへ見積として価格提示・納期案内をしますね。
後は受注になるかならないかワクワクドキドキ♪
さて次の仕事に・・・
あれ、何か忘れていませんか?
見積回答をくれた仕入れ先へのお礼メールをきちんとしましたか?
確かにこのお礼メールはあなたにとって何の有益性ももたらしませんし、手間が増えるだけです。
と、普通の人はそう思ってしまいます。
ですが、違うのです。
回答したことに対して「ありがとうございます」というメールをひとつ送るだけで、あなたは仕入れ先に対して印象を一つ残すことになるのです。
多くの営業マンは、見積を受け取ったことに対してほぼほぼお礼をしないからです。
大きな案件であれば意識的(あるいは意図的)に返信するかもしれません。
ただ、大体の場合それは「見積合わせになって他の商社さんからも依頼があるかもしれないから、その時はこちらを引き立ててね」等の、自分が得を取りたいという下心があったりするものです。
そういうメールではなく、「いつもありがとう」を忘れない営業マンは卸し先として好印象となり、良い意味で仕入れ先に気に留めてもらえるようになるのです。
「あの人の為なら」
どこか恋愛に近い要素があるかもしれないですね 笑
儲け話としてだけメールが送られてきているのか、損得勘定抜きで丁寧な姿勢で接してくれているのか。
結構、見られているものですよ。
そして恋愛と同じで、一方通行で終わるメール程虚しいことはありません。
そんな人から次に依頼を受けた時に、あなたなら気持ち良くお仕事を引き受けられるでしょうか?
小学生の時に習う「やってもらったらありがとう」という人として当たり前のことを忙しいを理由におろそかにしないようにしましょう。
自分で何も調べない
相手の時間がタダだと思っている
以前の記事でも書いたことがありますが、商社というのは「自社で作った製品を売っているメーカー」とは違い、基本的には買い物をしてそこにマージンを乗せて販売することでビジネスが成り立ちます。
なので、多くの場合、お客さんから依頼された物事に対して「見積を提出する」という作業は出来ても「その製品の特性や性能を事細かに説明する」ということは基本的に苦手な人が多いでしょう。
確かにそうなのです。
どう逆立ちしても、そのものを作っているメーカーの人間よりも製品知識を持つことは難しくて当たり前です。
ですが、商社の担当者に対してお客さんは「こういうことをしたいのだけれど、それに相応しい仕様の製品知ってる?」というような相談をすることが多く、そもそも買うものが決まっているお客さんに対して「ただ見積を出すだけ」というような営業マンも結構いますが、そのような人は商社として満足に機能していないに等しいので、当然お客さんからの依頼も少ない傾向にあります。
では実際に、「具体的に買いたい製品は決まっていないが、やりたいことは決まっている」というお客さんから相談があった際に、あなたはどのようにしてメーカーや仕入れ先にそれを伝えますか?
右から左。
言われたまま。
伝言ゲームのように、お客さんからの依頼をそのまま仕入れ先に伝える。
ダメですね。
例えば、お客さんから「適当に使い勝手の良いパソコンが欲しい」と言われます。
これだけの情報でズバッと要求に答えるパソコンを提案出来たら天才ですね。
実際は、デスクトップなのかノートなのかから始まり、メモリやストレージの容量、CPU、必要な外部出力ポート、DVDドライブの有無・・・・など基本的な部分でも聞かないとスペックを決められないことが多々あります。
あなたがパソコンに詳しくないとしても、「何をしたいのか」くらいはお客さんから聞かないと、パソコンメーカーも「何を提案したら良いのか」がさっぱり分かりませんね。
適当に使い勝手の良いパソコンと言っても、エクセルやワードが出来れば良いのか、動画編集をバンバン行う際に操作性が良い物を求めているのか、そのあたりを最低限知らないままでは提案も何もないのです。
ですので、まずはお客さんにそのあたりの基本的なことを聞いたうえで、例えば「ゲームを快適にする為に」と聞けたとします。
「ゲームをする為のパソコン」を提案して!とメーカーにあなたが依頼します。
どうですかね?
確かに、全く用途が分からないところからは前進したように見えますが、この段階ではメーカー側で行う機種選定にまだまだ「手間」がかかります。
ましてや、ゲーム用途のパソコンをラインナップしているメーカーかどうか、この時点ではあなたは分かっていなく、もしかすると問い合わせたメーカーでは扱ってすらいないかもしれません。
ネットで「ゲーム・パソコン」と検索すれば、「おすすめゲーミングパソコンまとめ」のようなサイトがいくらでも出てきますね。
それを見ることで、大体の相場観や、どういうメーカーがそれらに強い商品を取り揃えているのか、ある程度の目安が掴めると思います。
この段階まで来れば、お客さんの用途、おおよその必要予算、問い合わせるべきメーカーが絞られてくるので、実際に依頼を受ける側=仕入れ先やメーカーでも選定基準が見えるので、大分提案がしやすいでしょう。
ゲーミングパソコンという言葉も知らずに、「ゲームをしたい」という要求だけを伝えれば、確かにあなたの初動としての「調べる」という時間や作業は割愛出来ます。
ですが、「お客さんの声をダイレクトに聞けていないメーカー」がその選定を請け負ったところで、結局あなたに対しての質問事項が後追いで入ることになります。
そして、このような依頼をする商社営業マンは「丸投げの人」として信頼が落ちます。
分からないながらも一通り調べたことが垣間見える依頼というのはメールを見れば意外と判別がつくものです。
「一生懸命調べたんだな」とか「自分に対して依頼前に材料を揃えてくれたんだな」とか受け取った側が自然とそれを感じられれば、「ではこちらもより良い提案をしよう」という感情に繋がり、良い流れが生まれます。
プラスして、内容がきちんと取りまとめられた依頼であれば回答する側も自身が行う作業が少ないので、「優先度を上げて回答」しようと自然と思えるもので、ここもメリットとなりますね。
以前のブログで有益なメール返信内容のについても触れています↓↓
なんでもかんでも人に調べさせるというのは依頼でも何でもありません。
ましてやこれだけネットで情報が得られる時代でそれを普段から行うことは、自分の営業マンとしての価値がないことを公にうたっていることに他なりません。
自分の時間が有限であるように、相手の時間も限られていることを念頭に置きましょう。
付加価値として、「自分で調べたこと」は「ただ聞いたこと」よりも自分の知識・経験値としての蓄えられ方が全く違うということもあり、レベルアップにも繋がります。
まとめ
仕入れ先は運命共同体
あなたにとって仕入れ先は「お客さま」です。
ですが、同時に、「ビジネスパートナー」です。
繰り返しになりますが、商社にとっては物を売ってくれる会社が無いということは命取りになるのです。
フェアトレードという言葉がありますがまさにこれです。
提供してもらうことでそこに利益・有益性が生まれるのであれば、そこにはそれに相応しい対価と感謝が同時に生まれなければいけないのです。
買っている側が偉いなんてそんな風にお客さんから思われたら、誰だって嫌ですよね。
依頼するだけ依頼して、返信も無し。
仕入れて販売したものでお客さんからクレームが入った時には、全ての責任を仕入れ先に取らせる姿勢で仕事をしているような営業マンもいます。
タイミングやラッキーが重なり一時の売上が上がることはあるにせよ、それが継続性を持つかと言われれば「100% No」です。
一方で、フェアな姿勢でお客さまへも仕入れ先へも分け隔てなく接する営業マンには、良い情報が黙っていても沢山入るようになり、提案の内容・スピードも間違いなくレベルの高いものに成熟していきます。
明日からの仕事に対する思いの持ち方を少しだけ変えてみましょう。
後記
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回は「仕入れ先への意識」についてお話をしてみました。
円滑なビジネスをするにあたって、支えてくれる仲間は多い方が良いですし、表面上の付き合いで終わってしまうよりも、依頼を受け取った側が「あっ、この人からの問い合わせだ♪」とメールを開くことに嬉しさを覚えるくらいになれたら最高ですよね。
ご質問・ご相談ありましたらコメント欄からお問い合わせ下されば個別にお返事致します。
その他、ブログ内で取り上げて欲しい内容があればお気軽にご要望下さい。